「冷え性」は女性特有のものと思われがちですが、最近では生活様式の変化に伴って、老若男女を問わず、よく相談をうける症状のひとつです。西洋医学では病気と見なされず、有効な治療法もないまま放置されています。
 東洋医学からみる冷え性は、原因が二つと考えられています。
 一つは生活習慣から来る問題です。日本人は素足で畳での生活が多い上に、極めて薄着の傾向があります。特に多くの女性は冬、夏問わずスカートをはきます。まだ生食、冷たい飲み物を好む習慣もあります。これらの習慣は、外邪(湿気、寒気など病気が引き起こす因素は外邪、まだは外淫といいます)が身体内部に侵入する

絶好の条件です。
東洋医学では、腎臓は身体の陽気が宿る場所と同時に経絡で足腰をつなげており、最も寒さに弱い臓器であります。脾臓は消化・吸収を司る、陽気を生成する場所です。両臓器ともに水の代謝と関係しています。生食、冷たい飲み物で過度に脾胃に直接刺激を与えることによって、脾の働きがおさえられ、陽気の生成と水の代謝が支障を起こします。腹痛食欲不振神経痛肥満不眠自律神経失調症便秘
下痢などの症状が表れます。又、身体が温まらない為に腰痛頻尿生理痛残尿感生理不順
膀胱炎おりものも多くなり、不感症不妊などをもたらす事もあります。
 二つ目は、体質から来る問題です。東洋医学は『腎は先天之本、脾は後天之本』という説があります。
腎蔵は先天的、遺伝的要素が含まれています。身長や体格等のように遺伝的なもので決められていますので、生まれつき腎陽虚の方もいらっしゃいます。冷えと共に頭痛めまい立ちくらみのぼせ
早産流産など腎陽虚の症状が出ます。
私の臨床経験からみれば、圧倒的に多いのは、生活習慣からくる問題です。
 冷え性の臨床治療は、主に腎臓と脾臓の生理機能を調節し治療しますが、
身体の五臓六腑の間は全部関連性がありますから。
臨床治療は症状に応じて対応いなければなりません。


 症例1
Xさん、女性、60歳、主婦、平成10年来診
数年前から慢性膀胱炎を患いました。治ったり、再発したりを繰り返す状態、足腰が冷え、頻尿、夜間は何度もトイレに行くために起きます。舌淡、脈沈遅。
 診断、腎陽虚性冷え性
ハリ処方:鍼刺腎兪、腰陽関、膀胱兪、承山、三陰交等ツボ。鍼後気海、照海などツボ、各灸5分間、週二回、二週間で、足、腰の冷えが消え、夜中にトイレに行かなくなりました。その後も週一回来診、膀胱炎が再発しません。

 症例2
Wさん、女性、21歳、会社員、平成13年来診。
中学生頃から手足や、腹が冷えやすく寒がりです。食欲不振、疲労感で仕事に集中できません。舌肥大、脈遅緩。
 診断、脾陽虚性冷え性。
 ハリ処方 中かん 健里、天枢、陰陵泉、足三里等ツボ、週一回、三週間で仕事集中できました。二ヶ月でほぼ完治しました。
 
 症例3
Tさん、34歳、主婦、平成14年来診
身長156cm、体重38kg、10年前結婚し、今まで三回流産しました。子供ころから、しもやけになりやすい、常に体が冷える、めまい、耳鳴り、おりものが多く、毎日2〜3回下着を着替えます。舌淡、脈細弱。
 診断、腎陽虚性冷え性。
 Tさんは、先天性腎陽虚性であります。東洋医学では『後天養先天』という教えがあります。これは先天の腎が足りない物は、後天の脾が強化し、補うということです。先天は変えられませんが、後天は努力する事で克服できます。したがって、Tさんの治療は強健脾気から始まり。
ハリ処方、鍼針、中かん、天枢、気海、水道、脾兪、胃兪、腎兪、足三里、三陰交等ツボ、週一回、六週間で、耳鳴り、めまいが無くなりました。八週間目は冷えがおさまり、体重も2kg増えました。今も月1−2回来診。
 冷え性は生活習慣の改善や適度の運動と適切な治療をすれば、決して治らない病気ではないと思います。

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